【漆崎正樹】うるしざき まさき
漆崎正樹は、2016年8月に25歳で逝去した、若い作家です。
彼は、和紙や岩絵具などの日本画特有の画材研究に熱心であったのはもちろんのこと、他学科の友人から分けてもらった染料の草木を煮炊きしたり、寒冷紗を画布として使用してみたりと、同じアトリエの友人たちを度々驚かせていたようです。
彼の作品群には日本語タイトルのものが多く、表意文字と表音文字が混在する日本語の複雑さ、面白さを巧みに取り入れています。たとえば、「ふれあいおんど」という作品を見た時、筆者は「ふれあい音頭」だと思い込んでいました。しかし実際のところはおそらく「温度」であったのだろうと、作者が逝去してしばらくの後ご遺族との作品整理の最中に気付きました。「音頭」が「温度」になると意味はガラリと変わるはずなのですが、「おんど」という表音が依然として強く作品と深く結びついており、意味が変わってしまったことを作品自身が全く気にも留めず、ひょうひょうと存在し続けているように感じました。その作品の在り方は、まるで知らない言葉で心地よさそうに歌っているようで、自身の生命を粛々と営む未知の巨大生物のようにも、あるいは細胞のような小さい生物のようにも見えました。
中学・高校・大学学部生までバスケットボールを継続し、大学のバスケサークルでは主将を務めるなど兄貴肌な気質を覗かせながらも、先生や先輩から後輩に至るまで多くの人々が彼のことを気さくに「ウルシ」と呼んでいた様子から、その親しみやすい朗らかな人物像が窺えます。
今となっては作者の意図を精密に聞き取り記述することも叶いませんが、きっと彼は、鑑賞者それぞれがが全く違う感性で意見を述べたとしても、むしろ面白そうに熱心に頷き、さらなる作品の進化について構想を膨らませているのではないでしょうか。
(筆:ヘルツアートラボ)
【略歴】
1990年11月16日生まれ。
2010年4月 多摩美術大学絵画学科日本画専攻入学。
2014年3月 多摩美術大学絵画学科日本画専攻 卒業
2016年3月 多摩美術大学大学院(絵画専攻日本画研究領域)修了。
2016年8月 25歳で逝去
【展示歴】
2012年「G展」(デザインフェスタギャラリー/原宿)。2013年「見参」(タワーホール船堀/船堀)。2014年「アートのチカラ」(新宿伊勢丹/新宿)、「東京五美術大学連合卒業修了制作展」(国立新美術館/乃木坂)、「多摩美術大学日本画専攻有志卒業制作展えちがい」(BankART/横浜)、「新世代の日本画六人展」(アートスペース羅針盤/京橋)、「にぎやかな未来」(銀座スルガ台画廊/銀座)。2015年「羊がいっぱい展」(青山アートスクエア/青山)、「スクエア・ザ・ダブル」(フリュウギャラリー/千駄木)、「Spirit展」(銀座スルガ台画廊/銀座)、「アートのチカラ」(新宿伊勢丹/新宿)、2016年「漆崎正樹展」(アートスペース羅針盤/京橋)
漆崎正樹は、2016年8月に25歳で逝去した、若い作家です。
彼は、和紙や岩絵具などの日本画特有の画材研究に熱心であったのはもちろんのこと、他学科の友人から分けてもらった染料の草木を煮炊きしたり、寒冷紗を画布として使用してみたりと、同じアトリエの友人たちを度々驚かせていたようです。
彼の作品群には日本語タイトルのものが多く、表意文字と表音文字が混在する日本語の複雑さ、面白さを巧みに取り入れています。たとえば、「ふれあいおんど」という作品を見た時、筆者は「ふれあい音頭」だと思い込んでいました。しかし実際のところはおそらく「温度」であったのだろうと、作者が逝去してしばらくの後ご遺族との作品整理の最中に気付きました。「音頭」が「温度」になると意味はガラリと変わるはずなのですが、「おんど」という表音が依然として強く作品と深く結びついており、意味が変わってしまったことを作品自身が全く気にも留めず、ひょうひょうと存在し続けているように感じました。その作品の在り方は、まるで知らない言葉で心地よさそうに歌っているようで、自身の生命を粛々と営む未知の巨大生物のようにも、あるいは細胞のような小さい生物のようにも見えました。
中学・高校・大学学部生までバスケットボールを継続し、大学のバスケサークルでは主将を務めるなど兄貴肌な気質を覗かせながらも、先生や先輩から後輩に至るまで多くの人々が彼のことを気さくに「ウルシ」と呼んでいた様子から、その親しみやすい朗らかな人物像が窺えます。
今となっては作者の意図を精密に聞き取り記述することも叶いませんが、きっと彼は、鑑賞者それぞれがが全く違う感性で意見を述べたとしても、むしろ面白そうに熱心に頷き、さらなる作品の進化について構想を膨らませているのではないでしょうか。
(筆:ヘルツアートラボ)
【略歴】
1990年11月16日生まれ。
2010年4月 多摩美術大学絵画学科日本画専攻入学。
2014年3月 多摩美術大学絵画学科日本画専攻 卒業
2016年3月 多摩美術大学大学院(絵画専攻日本画研究領域)修了。
2016年8月 25歳で逝去
【展示歴】
2012年「G展」(デザインフェスタギャラリー/原宿)。2013年「見参」(タワーホール船堀/船堀)。2014年「アートのチカラ」(新宿伊勢丹/新宿)、「東京五美術大学連合卒業修了制作展」(国立新美術館/乃木坂)、「多摩美術大学日本画専攻有志卒業制作展えちがい」(BankART/横浜)、「新世代の日本画六人展」(アートスペース羅針盤/京橋)、「にぎやかな未来」(銀座スルガ台画廊/銀座)。2015年「羊がいっぱい展」(青山アートスクエア/青山)、「スクエア・ザ・ダブル」(フリュウギャラリー/千駄木)、「Spirit展」(銀座スルガ台画廊/銀座)、「アートのチカラ」(新宿伊勢丹/新宿)、2016年「漆崎正樹展」(アートスペース羅針盤/京橋)